【大学受験指導力を上げる10のヒント】(1)受験指導に最低限必要なこと
皆さん、初めまして。今回から『大学受験指導力を上げる10のヒント』と題し、受験指導についてお話しさせていただく久村太一です。
まずは自己紹介から。私はもともと大学受験予備校の英語講師としてキャリアを積んで参りました。そのキャリアを活かせているか自分ではわかりませんが,授業研修などのイベントの講師をつとめるほか,高等学校での特別授業講師業務やカリキュラム作成にも携わっております。かっこ良く言えば「学校経営コンサルタント」といったところです。
これから10回にわたって,「大学受験指導力を上げるために必要な要素やセンス」の養い方についてお話しします。第1回目は,受験指導に最低限必要なことについて。
そもそも高等学校で大学受験指導が必要か,という議論ですが,これには「必要である」とはっきり言えます。現在多くの高校では「大学入試突破」「大学入学実績向上」といったことが公・私立問わず叫ばれています。公立高校でさえも,近年では受験実績によって入学者数が左右されつつあります。また,大学受験とはあまり関係がないと言われてきた実業系高校でも,大学進学が選択肢の一つとして選ばれつつある……その実情を鑑みても,受験指導は「必要である」。
しかし,多くの学校では「なかなか生徒が指導にうまくのってこない」,「思ったほどの実績に結びつかない」といった問題を抱えています。それは何故か。もちろん指導のための準備時間が足りないといった時間的な問題もあるとは思います。しかし,指導がうまくいかない最大の要因を挙げるとすれば「指導のミスマッチ」という状態ではないかと私は考えます。例えば,現在多くの進学校や、進学校を目指している高校で行われているのは……
「とにかく進度を上げて高校2年終了時に教科内容を終了させる」
「授業時間をたくさんとり勉強漬けにすれば合格するだろう」
「難しい教材を扱えば生徒の学力が向上する」
「とにかく詰め込み詰め込みでテスト漬けにする」
といった指導ではないでしょうか。ギクッとした方もいるのでは?
確かに,一見,現役での大学受験合格につながりそうな指導方法ですし,保護者の方も安心しそうな方法ではあります。しかし,ここには決定的に足りない要素があるのです。何だと思いますか?
……それは「生徒の実情」という視点。そう、受験指導の出発点として最低限必要なことは、「生徒の実情を知る」ことなのです。
生徒は我々と同じ思考をしているわけではありません。また学年によって能力差もあります。「今までやってきてうまくいったからこれからもうまくいく」というのは,何の根拠もない,ある意味賭けのようなもの。生徒の学力と目指す学力像をすりあわせ,その上で指導することが受験指導を成功に導くカギです。進度だけ上げる,難しい教材を与えるといった場当たり的な指導では,「学力低下の時代」という流れを考えても指導がうまく作用しないのは明らかです。
もちろん,学年全員が満足する指導は不可能かもしれない。しかし学年の7~8割が満足し,学力を上げる方法をとることは可能であり,それをしなければならないのです。受益者である生徒の実情を考えず指導するのは単に教える側の研究不足であり,怠惰であるといえます。この意識を変えない限り授業や受験指導自体意味のないものになりますし,生徒や保護者からの学校不信につながり,ひいては学校経営自体も将来危うくなるかもしれません……。
ここまではっきり言っておいて打開策はあるのか?という反論を受けるでしょう。下手すれば今流行りの炎上ものです(笑)。当然「打開策」は用意してあります。その策をお話しするのがこのコラムなのです。今後このコラムでは,「生徒の実情」をうまく取り入れベストの結果を出しにいくためにどのようなことを考えたらよいのかというお話が中心になります。キーワードは「指導のTPO」。今はよく意味がわからないと思いますがそこが狙いです(笑)。
あくまで学校は生徒が主役。その生徒の輝く未来のために我々ができることを探っていく機会になれば幸いと考えています。次回以降、ご期待ください。
【今日のヒント】生徒の実情を考えた指導を徹底的に探る